浦和地方裁判所 昭和45年(行ウ)2号 判決 1981年5月27日
埼玉県三郷市東町二二八番地
原告
斉藤登喜蔵
右訴訟代理人弁護士
仲田晋
久保田昭夫
豊田誠
同県越谷市越ケ谷一丁目一番一号
(承継前の被告 春日部税務署長)
被告
越谷税務署長高橋森
右指定代理人
小野拓美
佐藤恭一
井上克男
中島重幸
植木功
本郷良一
主文
一
1 春日部税務署長が原告に対し昭和四三年二月五日付でした原告の昭和四一年分所得税の更正処分及び過少申告加算税賦課処分中、同署長が昭和四五年四月二七日付でした原告の右年分所得税の再更正処分及び過少申告加算税再賦課処分によつて取消された部分の取消請求に関する部分
2 右再更正処分及び過少申告加算税再賦課処分の取消請求
についていずれも訴えを却下する。
二 前項1に掲げる更正処分及び過少申告加算税賦課処分中、その余の部分に関する原告の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、原告の負担とする。
事実
第一当事者の申立
一 原告
1 春日部税務署長が原告に対し昭和四三年二月五日付でした、原告の昭和四一年分所得税の更正処分中、税額六万五〇七〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課処分中、二六〇〇円を超える部分を取消す。
2 同署長が原告に対し昭和四五年四月二七日付でした原告の昭和四一年分所得税の再更正処分及び過少申告加算税再賦課処分を取消す。
3 訴訟費用は、被告の負担とする。
二 被告
1 原告の申立1の請求を棄却する。
2 同2の請求について、訴えを却下する。
3 訴訟費用は、原告の負担とする。
第二当事者の主張
一 原告の請求原因
1 原告は、昭和四一年分所得税について別紙処分経過表の確定申告額欄記載のとおり確定申告をしたが、春日部税務署長は、昭和四三年二月五日付で原告に対し、同表の更正額欄記載のとおり更正処分及び過少申告加算税賦課処分(以下、両者を「本件更正処分」という。)をしたので、原告は、これについて異議申立したところ、同署長は、これを棄却した。そこで、原告は、さらに、関東信越国税局長に対し審査請求をしたが、昭和四四年一〇月二九日付で棄却された。その後、春日部税務署長は、昭和四五年四月二七日付で原告に対し、同表の再更正額欄記載のとおり再更正処分及び過少申告加算税の再賦課処分(以下、両者を「本件再更正処分」という。)をした。
2 本件更正処分及び再更正処分には、次のような違法事由がある。
(一) 原告の昭和四一年分の所得のうち譲渡所得は、別紙物件目録(一)の土地(以下「本件土地」という。)の譲渡によるものであるが、本件土地は、当時、事業(農業)の用に供されていたから、これについて、租税特別措置法(昭和四四年法律第一五号による改正前のもの。以下、単に「法」という。)三八条の六が適用されるべきであるところ、本件更正処分及び再更正処分は、これを誤認して同条を適用しなかつた。
本件土地が農業用資産に該当する理由は次のとうりである。
(1) 原告は、昭和二七年一二月三一日以前から本件土地を所有し、これを農業の用に供していた。
(2) 昭和三八年三月二二日、本件土地を含む周辺の土地約一万二〇〇〇坪(以下「本件埋立地」という。)について、所有者である原告ほか一九名は、東京都清掃局長との間に、ごみ埋立処理場用地として同年四月一日から埋立終了(昭和三九年三月三一日の予定)まで使用させる旨の土地使用貸借契約を締結した。以来、原告は、本件土地を東京都に使用させ、その代償として反当り年三万円の休耕補償料を受取つていた。
(3) 右契約は、昭和三九年六月に解除され、原告は同年八月ごろ本件土地の返還を受けた。
(4) 原告は、返還を受けて以来、順次本件土地に作付を開始し、昭和四〇年八月二八日まで本件土地を農地として使用して来た。原告のした主要な作付の状況は次のとおりである。
イ 昭和三九年八月中旬、本件土地のうち約八畝にわたつて「べか菜」を播種した。その結果順調に成育し、収穫を得た。
ロ 同年一〇月初旬、約一反歩にわたつて「べか菜」を、約三反五畝にわたつて「小松菜」、「小かぶ」、「春菊」、「そら豆」を播種した。その結果、「べか菜」、「小松菜」、「そら豆」は順調に発育し収穫を得たが、「小かぶ」、「春菊」は発育不良のためほとんど全滅した。
ハ 昭和四〇年四月初旬、約三反五畝にわたつて「べか菜」、「小松菜」、「小かぶ」、「春菊」を播種した。その収穫は、約五〇パーセントであつた。
ニ その間、原告は、返還された土地に施肥して土質改善にも努力する一方、前記以外の作物についても試作をした。
(5) 原告は、昭和四〇年八月二八日、第一屋製パン株式会社との間に、本件土地を三三二七万五〇〇〇円で売渡す契約をし、同日手付金として六六五万五〇〇〇円を受領し、昭和四一年六月一〇日、所有権移転登記を経由するとともに、残額二六六二万円の支払を受けた。
(6) 次いで、原告は、別紙物件目録(二)記載のとおり、各土地及び建物を合計三二五〇万六六九九円で取得したうえその登記を経由し、それぞれ取得の時から農業の用に供した。
(7) およそ、法三八条の六が、事業用資産の買換の場合の譲渡所得の課税について特例を設けている法意は、譲渡所得を譲渡行為によつて得た所得として形式的に把えるのではなく、その真の経済的意義、社会的意義に即して実質的に把えるべきであるという、いわゆる実質主義の基本的立場に立つて、所有者が従前譲渡資産を支配してきた目的意志(例えば、事業の用に供するという目的意思)を、新たに取得した資産(買換資産)のうえに継続して維持することなく、社会通念上、これを放棄したと認められる場合においてのみ、はじめて譲渡による所得があるとすることにある。かかる見地からすると、「事業(農業)の用に供している」とは、当該資産について、現に作付がされている状態にとどまらず、自然的条件、植物学的条件、経済的条件などによつて休耕を余儀なくされている状態も含み、また、農業改善・土地改良その他の事業の実施のために作付が不可能とされている状態でも、所有者が、社会通念上、農業のために目的的に支配する意思を放棄したと認められない限り、「事業の用に供している」と解すべきである。
本件土地については、原告は、従前有した農業の用に供する目的意思を放棄した事実はなく、譲渡時においてもこれを農業の用に供していた。すなわち、前記のとおり、原告は、東京都のごみ埋立事業及び土地改良事業のために、昭和三八年三月ころから、本件土地の全域にわたり一時期、あるいはその一部分につき一時期、休作を余儀なくされたが、これをもつて、直ちに農業の事業の用に供する目的意思を放棄したとみることはできないし、また、原告は、本件土地について、右埋立事業が実施されている期間は、これに伴う逸失利益等の補償料を受給していたほか、埋立完了地の返還を受けた以後においては、現に本件土地に作付、試作、施肥をして来たのである。
(二) 本件更正処分及び再更正処分は、信義則に違反するものであつて許されない。すなわち、
原告は、昭和四一年分所得税の申告に際して、昭和四一年一二月一六日と昭和四二年二月二一日の二回にわたり、春日部税務署の職員から指導を受け、同職員が法三八条の六を適用して計算した金額を譲渡所得として確定申告した。したがつて、原告には右申告について何ら責められるべき点はないのに、これに対してされた本件更正処分及び再更正処分は、誠実で善良な市民の信頼を裏切るものであつて、信義則に違反する。
(三) また、仮に、法三八条の六の適用を排除して更正処分をすることが許されるとしても、本件土地の譲渡によつて原告に所得が生じたのは、昭和四〇年であるのに、本件更正処分及び再更正処分は、これを昭和四一年分の所得と誤認している。すなわち、
原告が本件土地について売買契約を締結したのは前記のとおり昭和四〇年八月二八日(同日売買代金の約二割の金銭を授受)であるから、本件土地譲渡による所得は、右契約日に発生したのである。もつとも、所有権移転登記と残代金の支払は昭和四一年に行なわれたが、それは、本件土地の主要部分が農地であるため、農地法所定の許可のあつた後にされたにすぎない。
なお、仮に右譲渡所得の全額が昭和四〇年分に帰属しないとしても、少なくとも、売買代金の一割に相当する所得は同年分に帰属しているから、その全額が昭和四一年分に帰属するとしてした本件更正処分及び再更正処分は、結局、違法といわなければならない。
3 被告が処分理由として後記四2のような主張をすることは、次の理由により許されない。
(一) 春日部税務署長が本件更正処分及び再更正処分をしたのは、本件土地が譲渡当時、事業(農業)の用に供されていたとは認められないから、法三八条の六の適用はないという理由に基づくものであつた。
ところが、被告は、昭和五四年七月四日の本件口頭弁論期日において、右の理由のほかに後記四2の理由を付加した。
しかし、行政処分を行なうに際し、処分理由を特定しておくことは、それを明示するか否かを問わず、法治主義の内在的要請であり、行政庁が処分をするにあたつては、十分な根拠に基づいて行なうべきであつて、事後的にこれを正当化する根拠を探し出し、処分理由を追加する等のやり方は公正に反する。
(二) 仮に、処分理由の予備的追加が一般的には認められるとしても、本件については、許されるべきでない。すなわち、
第一の理由は、国税通則法第七〇条において更正期間が制限され、とりわけ減額更正でさえ法定申告期間後五年とされていることにかんがみると、本件の処分理由の予備的追加がされた時期は右五年の法定期間をはるかに経過していることである。
第二の理由は、処分理由の追加なるものは、長時間を経過した時点において主張する点で、法的安定性を害し、当事者の信頼を裏切り、さらには、法治主義に挑戦するものとして公序に反し、それ自体信義誠実の原則に反し、また、権利濫用にあたるからである。
4 なお、大蔵省組織規程(昭和二四年大蔵省令第三七号)の一部改正(昭和五四年六月三〇日大蔵省令第三三号)によつて、春日部税務署の管轄区域が分割され、昭和五四年七月一〇日から原告の住所地を管轄する税務署が越谷税務署に変更され、これに伴い、本件に関する権限が被告に承継された。
5 よつて、原告の申立どおり本件更正処分及び再更正処分の取消を求める。
二 被告の本案前の主張
原告は、本訴において、本件更正処分の取消とともに、本件再更正処分の取消を求めている。ところで、本件再更正処分は、減額再更正であつて、新たな具体的租税債務の確認的効果を発生させるものではなく、単に、当初の更正処分の一部を取消す処分にすぎないものであつて、原告に利益な処分であるから、原告は、本件再更正処分の取消を求める利益を有しない。
したがつて、本件再更正処分の取消を求める訴は不適法であつて、却下されるべきである。
三 請求原因に対する被告の答弁
1 請求原因1の事実は認める。
2 同2(一)は争う。但し、
(一) (1)の事実は認める。
(二) (2)の事実のうち、原告が反当り年三万円の休耕補償料を受取つていたことは否認するが、その余は認める。
(三) (3)の事実は否認する。原告が本件土地全部の返還を受けたのは昭和四〇年四月二日である。
(四) (4)の事実は否認する。
(五) (5)の事実は認める。
(六) (6)の事実のうち、原告が別紙目録(二)の各土地及び建物について所有権を取得し、その登記が経由されたことは認めるが、その余は知らない。
(七) (7)は争う。
3 同2(二)の事実のうち、原告が春日部税務署職員からその主張のような税務指導を受け、同職員の計算した金額を譲渡所得として申告したことは認めるが、その余は争う。
4 同2(三)は争う。
5 同3は争う。但し、本件更正処分及び再更正処分の理由が原告主張のとおりであつたことは認める。
6 同4の事実は認める。
四 被告の主張
1 法三八条の六にいう「事業の用に供している」というためには、営利を目的とし、自己の危険と計算において現に継続的に事業の用に供していることを要するのであつて、事業のために資産を目的的に支配する意思を持つているに止まる場合や事業に供しうる状態で保持しているに止まる場合はもちろん、資産を使用するにあたつても、単に一時的又は便宜的に利用しているにすぎない場合には、資産を事業の用に供したものとはいえない。
本件土地について、原告は、東京都にごみ埋立処理事業用地として貸与するときからその非農地化を予定し、返還を受けてからも、第一屋製パン株式会社に譲渡するまでの間、耕作のためには利用していないから、事業用資産ということはできない。仮に、原告が、返還を受けた後本件土地を耕作し、あるいは蔬菜の播種をしていたとしても、それは本件土地のごく一部であり、しかも、収穫を目的としたものでなく、本件土地の荒廃を防止するための耕作もしくは採算を度外視した試作的、家庭菜園的な一時利用にすぎないから、右利用をもつて、原告が本件土地を営利の目的で継続的に農業の用に供したものということはできない。
2 仮に、本件土地が「事業の用に供しているもの」に該当するとしても、原告が本件土地の買換として取得したと主張する別紙目録(二)の土地建物は、取得の時から一年以内に事業(農業)の用に供されていないか、あるいは、事業の用に供さなくなつているから、法三八条の六の適用はない。
3 信義則もしくは禁反言の法理は、専ら当事者が任意に処分又は放棄しうる権利もしくは利益に関する行為のみについて適用されるものであり、また、その適用対象とされる表示は、個別的、具体的事実の表示であることを要し、一定の仮定事実を前提として、これに法律や経験則を適用した結果にとどまる単なる意見もしくは意向の表示はこれにあたらないし、また、信義則もしくは禁反言の法理を認めるとかえつて違法な結果を生ずるような場合には、その適用は否定されるべきである。
ところで、租税債務は、税務官庁と納税者が任意に処分又は放棄しうる性質のものではないし、特に、課税処分においては、租税負担の公平が強く要請されるのであつて、本件更正処分が右法理の適用により取消されれば、原告は不当に課税を免れるという違法な結果となり、そもそも右法理が正義の観念から生ずるものであることに照らしても、その適用は許されない。さらに、所得税の確定申告は、納税者が自己の判断とその責任において行なう行為であるから、たとえ、その過程において税務職員に相談して誤つた指導、助言を受けたとしても、その指導、助言の趣旨と異なる税務署長の更正又は決定が信義則もしくは禁反言の法理に違反すると主張することは本来許されない。なお、本件における申告指導は、原告が本件土地を耕作していることを前提としたものであるから、その前提が異なる以上、信義則等を適用する余地はない。
4 本件譲渡所得の収入計上時期は昭和四一年である。すなわち、
収入すべき金額とは、収入すべき権利の確定した金額をいい、収入金額の確定時期は、本件のように資産の譲渡によつて発生する譲渡所得の場合には、当該資産の所有権その他の権利が相手方に移転する時である。ところで、本件土地は地目が農地であつたから、原告と第一屋製パン株式会社との間における売買契約は、農地法五条の規定による許可のあることを停止条件としてなされたものであり、右許可は昭和四一年六月四日にされているから、本件土地の所有権は、同日、第一屋製パン株式会社に移転し、したがつて、本件土地の譲渡所得は、昭和四一年に帰属する。
5 原告の税額を計算すると次のとおりであつて、本件更正処分には何ら違法はない。
(一) 本件土地の譲渡による収入金額は、総収入金額三三二七万五〇〇〇円から必要経費一五三万一一五五円(取得費用一三万三一〇〇円、取得後の改良費三三万九八〇五円、譲渡手数料一〇五万八二五〇円)と譲渡所得の特別控除額一五万円を差しひいた三一五九万三八四五円であり、課税標準として総所得金額に算入される譲渡所得は、その二分の一の一五七九万六九二二円である。
(二) 次に、原告は、昭和四一年に農業所得六万六六一五円、雑所得として四〇万円の収入を得ているから、総所得金額は、譲渡所得一五七九万六九二二円に右各所得を加算した一六二六万三五三七円となり、これによつて計算すると、税額は、七二二万九一〇〇円、過少申告加算税は三六万八〇〇円となる。
第三証拠
一 原告
1 甲第一号証から第一九号証、第二〇、二一号証の各一、二、第二二号証から第三五号証
2 証人戸石博、同渡辺政一、同鶴岡孝七功、原告本人(第一、二回)
3 乙第一七、一八号証の成立は知らない。その余の乙号各証の成立は認める。
二 被告
1 乙第一号証、第二号証の一から三、第三号証から第三九号証、第四〇号証の一、二
2 証人青木仁、同河西三男、同細貝義雄、
3 甲第八、九号証の成立は知らない。その余の甲号各証の成立は認める。(甲第一七号証から第一九号証については原本の存在も認める。)
理由
第一本案前の判断
一 春日部税務署長が、原告の昭和四一年分所得税の確定申告(総所得金額六八万八二四一円。内訳-農業所得六万六六一五円、譲渡所得六二万一六二六円)について、昭和四三年二月五日付で、総所得金額を一六三三万三三五二円(内訳-農業所得は前同、雑所得四〇万円、譲渡所得一五八六万六七三七円)、納付税額を七二六万七六〇〇円とする旨及びこれに付帯して過少申告加算税を賦課する旨の本件更正処分をしたこと、これについて、原告が異議申立をしたが棄却されたので、さらに、関東信越国税局長に審査請求をしたところ、昭和四四年一〇月二九日付で棄却されたこと並びに右署長が、昭和四五年四月二七日付で、総所得金額を一六二六万三五三七円(内訳-農業所得、雑所得は本件更正処分と同じ、譲渡所得一五七九万六九二二円)、納付税額を七二二万九一〇〇円とする旨及びこれに付帯して過少申告加算税(減額)を賦課する旨の本件再更正処分をしたことは、当事者間に争いがない。
二 前項の事実によると、本件再更正処分は、先行する本件更正処分における課税所得金額を減少させるとともに、これに応じて所得税額及び過少申告加算税額をも減少させる処分であるから、これによつて本件更正処分のうち減額された部分が取消される効力を生ずるものであつて、原告に有利な処分であることが明らかである。
したがつて、本件訴えのうち、本件更正処分中すでに取消された部分の取消請求に関する部分及び本件再更正処分の取消請求は、いずれも法律上の利益を有しないというべきである。
第二本案についての判断
一 法三八条の六の要件の存否
本件土地が、昭和二七年一二月三一日以前から原告の所有であつて、事業(農業)の用に供されていたところ、原告が、昭和四〇年八月二八日、これを第一屋製パン株式会社に対して譲渡(売買)したことは、当事者間に争いがなく、原告は、右譲渡について法三八条の六が適用されるべきである旨主張する。
思うに、譲渡した資産が同条にいう「事業の用に供しているもの」であるというためには、単に自己の事業の用に供しうる状態にあつただけでは足りず、原則として、譲渡の当時、現実かつ継続的に事業の用に供していたことを要するが、たまたま現実にはその資産を使用していなくても、事業の用に供する意図をもつてこれを所有し、かつ、その意図が近い将来において実現されることが客観的に明白であつた場合もこれに含まれるものと解するのが相当である。(昭和四二年五月一九日最高裁判所第二小法廷判決参照)。原告は、所有者が事業のために目的的に支配する意思を放棄しない限り、事業用資産と解すべきである旨主張するが、同条の規定は、企業の合理化と生産財の有効利用を図るため、特定の事業用資産を譲渡した場合において、一定の条件のもとに圧縮記帳の方法による譲渡所得の課税の繰延の特例を認めたものであつて、このような立法趣旨からすると、所有者の目的意思の持続をもつて足りると解することは広範にすぎるものがあり、原告の右見解には左袒することができない。
そこで、本件について考察する。
1 土地使用貸借とその終了
昭和三八年三月二二日、本件土地を含む本件埋立地について、原告ほか一九名の所有者が、東京都清掃局長との間に、ごみ埋立処理場用地として同年四月一日から埋立終了(昭和三九年三月三一日の予定)まで使用させる旨の使用貸借契約を締結したことは、当事者間に争いがない。そして、成立に争いのない乙第一号証、第二号証の一、二、第三号証から第三五号証及び弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。
(一) 右契約において、「埋立」とは、本件埋立地にごみを埋めるとともに、その後に覆土してこれを整地することであつて(以下、両者を区別するときは、「埋立作業」と「覆土作業」という)、使用借主たる東京都がすべて担当することになつていた。
(二) 東京都においては、昭和三八年四月本件埋立地の引渡を受け、以来、その全域にわたつて同時にしたものではないが、大略昭和三九年六月ころまでの間に各種のごみを搬入して埋立作業を行ない、同年九月ころから覆土作業に入つた。その間、昭和三八年一一月一四日には、白石一二ほか三名が本件土地の周辺にある各所有地をごみ埋立用地に提供して、東京都清掃局長との間に、前記同旨の使用貸借契約(但し、使用期間は同月一五日から昭和三九年八月三一日覆土作業完了まで)を締結し、これによつて、本件埋立地は合計約一万二八〇〇坪に拡張された(なお、以下「本件埋立地」というときは、右拡張された分を含めて指すものとする)。
(三) 東京都の埋立は、当初の予定よりかなりおくれ、本件埋立地全域について覆土作業が完了したのは昭和四〇年二月ころであり、正式には同年四月二日本件埋立地が原告ら所有者に返還され、ここにその使用貸借契約が終了するに至つた。
原告は、右契約は昭和三九年六月に解除され、同年八月ころ本件土地の返還を受けたと主張し、成立に争いのない甲第二号証(昭和四二年一月九日付三郷町長の春日部税務署長宛の書面)には、「契約解除は昭和三九年六月であるが、すでにそれ以前に覆土を終了した」との記載があり、また、原告本人(第一回)は、昭和三九年八月ころ(六月とも言つている。)本件土地を返還された旨供述する。
しかし、原告本人の供述(第一回)によると、甲第二号証の書面は、原告その他の所有者らが春日部税務署から修正申告を求められた(昭和四二年一二月ころか)ため、三郷町長に依頼して出してもらつたものである(したがつて、その日付に昭和四二年とあるのは、昭和四三年の誤記ではないかと思われる。)ことがうかがわれるうえ、前掲乙第三号証は、昭和四〇年四月二日付東京都清掃局長作成にかかる本件埋立地の返還書であるが、これには、立会人として三郷町長の記名押印があるのに、どんな根拠に基づいてこれと矛盾する甲第二号証の右記載がされたのか理解に苦しむものがあり、結局、右記載部分及び原告本人の前記供述は、前掲乙号各証と対照して、採用することができないし、他に、右各認定を動かすに足りる証拠はない。
そうすると、本件埋立地は、昭和三八年四月から少なくとも昭和四〇年二月ころまでの使用貸借期間中は、使用借主たる東京都の支配管理のもとにあつて、現実に、ごみ埋立処理用地として使用されていたことが明らかであるから、この間、原告が本件土地を現実かつ継続的に農業用に供するということはありえないし、また、そのようなことが可能である状態にもなかつたといわねばならない。
なお、前掲甲第二号証、乙第一号証及び原告本人の供述(第一回)によると、前記使用貸借契約において、土地の使用料は無償とされたが、契約に際して、各所有者らに対し反当り三万円の金銭が支払われた事実が認められる。そして、その金銭が、原告主張のように、休耕補償料であつたとすれば、各所有者が契約によつて農業経営の意図を放棄したものではないことが一応裏付けられるとしても、そのことから、当然に、本件埋立地が使用貸借期間中も農業経営が可能な状態にあつたということにはならない。
2 土地使用貸借に至つた経緯
前記使用貸借契約が締結された端緒が東京都側の要請によるものか、それとも、地元三郷村(その後町となつた。)側のそれによるものか、証拠上必ずしも明確ではない(成立に争いのない乙第二号証の三によると、本件埋立地のうち拡張された分については、地元側から積極的に埋立を申入れたようである。)が、前掲甲第二号証、成立に争いのない甲第一号証、証人鶴岡孝七功の証言、原告本人の供述(第一回)及び弁論の全趣旨によると、次の経緯が認められる。
(一) 本件埋立地の地域は、おおむね低湿田地帯であつて、滞水、冠水のため水稲の生産量が少なかつた。
(二) そこで、地元の三郷村としては、原告ら所有者に対して、ごみ埋立用地として提供するについては、埋立終了後は覆土して本件埋立地を畑とし、土地改良事業による耕地整理を行ない、収穫の増大を図る目的である旨を告げて、土地の提供を勧奨した。
(三) 本件土地は、本件埋立地のうちにあつて、周囲の土地よりは一メートル位高く、収穫も相当程度にあつたため、原告は、はじめ本件土地の提供に乗り気ではなかつたが、返還後農地として効率的に利用できるものと考えて、他の所有者らと同調して前記契約に応じた。
右認定によると、契約当初において、三郷村当局は、原告ら所有者に対し、返還後の本件埋立地を農業用地として利用させる意図であることを表明し、原告も、本件土地において農業経営を継続する予定であつたことは肯認できる。しかし、三郷村や原告ら所有者の意図がそうであつても、そのことが東京都との関係において表明されていた形跡は認めることができない。すなわち、
もし、返還後の本件埋立地を農業用地とするのであれば、土地使用貸借契約に際して、本件埋立地に投棄するごみの種類を制限するとか、覆土に使用する土の量、質に特段の条件を付けるとかして、返還後における土地改良を容易にするための方策を取るのが当然と思われるのに、契約書である乙第一号証(覚書)には、これに関する記載は全くないし、使用貸借継続中に所有者らからそのような申入れがされた事実も認められない。それどころか、後に認定するとおり、埋立及び覆土作業の結果、本件埋立地が全く農耕に適しない状態になつて返還されたにもかかわらず、前掲乙第三号証によると、東京都の返還書には、「(所有者らは)本件に関する一切の異議の申立てをしない」との条項が明記されているのである。
結局、契約当初における当事者(特に、貸主たる原告ら所有者)の意図と、その後に本件埋立地の客観的情況がどのように推移したかということは、別個の問題であり、したがつて、仮に、本件土地に関する原告の農業経営の意図がその後も持続されていたとしても、そのことから、本件土地が返還された時点において、右意図が近い将来実現されることが客観的に明白であつたと推定されるものではない。
3 埋立の実情と土地の変化
前掲乙第一号証、第二号証の二、第三五号証に、成立に争いのない乙第四号証、第八号証から第一三号証、第二二、二三号証、証人河西三男及び同細貝義雄の各証言によると、次の事実が認められる(原告本人の供述(第一回)中この認定に反する部分は採用しない)。すなわち、
東京都清掃局の行なう埋立工事は、埋立高を県道面より一・三メートル(覆土とも)高くし、覆土を三〇センチメートルとする基準であつたが、実際には、一般家庭から出る生ごみは勿論、工場の廃棄物、工作物の残骸、ビニール、ゴム、バツテリ等の不燃物質その他雑多なごみが二メートルから三メートル位の厚さに埋められ、これに対する覆土は、二〇センチメートルの厚さ位に炭がらを敷き、その上に三〇センチメートル位山砂を覆うという程度であつた。そのため、埋立てたごみからガスが発生して悪臭を放ち、覆土後のままでは、到底農作物が作れる状態ではなく、今後これを事業用農地として使用するには、覆土の上にさらに三〇センチメートルから四〇センチメートルの盛り土をしたうえで、耕耘、施肥をする必要があつた。
右事実によると、本件埋立地は、契約当初における三郷村や所有者らの意図とは逆に、そのままでは全く農耕に適しない状態になつたものであり、その状態のまま、前記認定の昭和四〇年四月二日、原告ら所有者に返還されたものといわざるをえない。
4 原告主張の土地使用
ところで、原告は、本件土地について、昭和三九年八月中旬、同年一〇月初旬及び昭和四〇年四月初旬の三回にわたり、べか菜その他の蔬菜類等を播種、収穫して、これを農地として使用して来た旨主張し、原告本人(第一回)は、ほぼ右主張に添つて、本件土地における耕耘、施肥、播種、収穫等の状況を詳細に供述している。
しかし、先に認定したとおり、本件埋立地については、昭和三九年九月ころから覆土作業に入つているのであり、それが終了して正式に返還されたのは昭和四〇年四月二日であるから、昭和三九年八月から一〇月にかけて、原告主張のような作付が可能であつたとは容易に信じられない。仮に、そのころ原告が作付をしたとしても、それは、東京都清掃局の行なう埋立及び覆土作業の合い間をぬつてしたものであつて、せいぜい、小部分の土地にはいわば採算を度外視して試作した程度のものとしか考えられない(なお、証人青木仁の証言から成立を認める乙第一八号証には、本件土地は高いところであつたので、一〇〇坪位最後の覆土まで耕作していた、覆土後は耕作されていない旨の記載がある)。
そればかりでなく、前掲乙第一号証、第二号証の一、第四号証、第八号証から第一〇号証、成立に争いのない乙第五号証から第七号証及び証人鶴岡孝七功の証言によると、春日部税務署職員が昭和四五年九月に本件埋立地関係者に事情を聴取したところ、その所有者であつて、原告とともに使用貸借契約の当事者となつている鶴岡孝七功、白石勢喜(同人は所有者白石政夫の後見人)、鈴木哲二、福岡誠一、宮崎正太郎、増田憲二及び鈴木洋(拡張分の所有者)が、口を揃えて、原告は、埋立後本件土地に作物を作つた事実はない旨を述べていることが認められる。
このような場合、原告本人の前記供述を裏付ける的確な直接証拠ないし間接証拠が存在しない限り、右関係者らの供述がことごとく虚偽の内容であつて、原告本人の供述のみが真実であると判定するには甚だ躊躇せざるをえない。そこで、以下、本件に現われた証拠資料について順次検討してみよう。
(一) 前掲甲第一、二号証には、「(本件埋立地を)畑に変換して収入の増大を図ることが目的である」旨の記載があるが、先に判示したとおり、それは、契約当初における三郷村の意図にすぎず、返還後原告が本件土地に耕作したかどうかとは関連がないことである。また、甲第二号証には、「各地主は覆土終了後………持分と認められる個所は各自それぞれ耕作をしていたようである」との記載があるが、同号証は、先に判示したように、修正申告の問題が生じた後に作成された税務署宛の書面であつて、その内容に作為的なものがあるので、右記載部分には信を置きがたい。
(二) 成立に争いのない甲第三号証から第五号証、第七号証、乙第一五号証及び原告本人の供述(第一回)によると、昭和三九年五月二八日に三郷南部土地改良区が認可設立され、同改良区の区域内に本件埋立地があつたため、原告は、昭和三九年から昭和四一年度の各賦課金を納付した事実が認められるけれども、成立に争いのない乙第三〇、三一号証によると、賦課金は、現実に耕作していると否とにかかわらず徴収するものであることが認められるので、賦課金納付の事実が直ちに耕作と結びつくものではない。
(三) 成立に争いのない甲第六号証(三郷町農業委員会委員長の証明書)には、原告が本件土地を耕作又は試作した旨の記載があるけれども、成立に争いのない乙第一六号証によると、同委員会においては、当時誰がどこを耕作していたかわからないのにかかわらず、原告の申出によつて右証明書を発行したことが認められるので、甲第六号証は、証拠として価値がない。
(四) 甲第八号証(成川良雄及び白石一二の証明書)には、原告が、本件土地を譲渡した当時、これを耕作及び試作していた旨の記載があるけれども、証人青木仁の証言から成立を認める乙第一七、一八号証及び同証人の証言によると、成川及び白石は、ともに、後日春日部税務署職員に対して、右記載と反対の事実を述べていることが認められるので、甲第八号証は、証拠として価値がない。
(五) 成立に争いのない甲第九号証は、東和農業協同組合発行の原告宛肥料の納品書であるが、原告が、当時、そのような肥料を購入したとしても、原告は、本件土地以外にも多くの耕作地を有している(成立に争いのない乙第四〇号証の一、二)から、甲第九号証が本件土地の耕作と関連があるかどうか不明である。
(六) 証人戸石博は、原告の前記主張とほぼ一致する証言をしている。しかし、そのうち昭和三九年九、一〇月ころの状況については、先に示したとおり、本件埋立地に覆土作業が行なわれている最中であつて、容易に信じられないし、また、昭和四〇年四月ころの状況については、次項に判断する証人細貝義雄及び同渡辺政一の各証言とくいちがつており、結局、戸石証人の右証言は、採用することができない。
(七) 証人細貝義雄及び同渡辺政一は、昭和四〇年四月ころ、本件土地を検分したところ、その中央部分に耕作されたような跡があつた旨証言する。しかし、右各証言は、いずれも本件土地に作付されていた状況を確認したというものでなく(この点において、戸石証人の証言や原告本人の供述とは一致しない)、当時、原告において現実に本件土地を耕作していたことの証拠としては価値が少ない。
(八) 証人鶴岡孝七功は、第一屋製パン株式会社との売買契約(昭和四〇年八月)があつたころ、原告から本件土地でとれた野菜だと示されたり、そういわれる野菜を自動車で運んだりしたことがある旨証言する。しかし、同証人は、他の個所においては、原告が本件土地で作物を作つていたかどうかはわからないとか、昭和三九年は耕作していなかつたかもしれないとか、核心的な証言を避けており、また、前掲乙第四号証(同人に対する聴取書)には、「原告は、農作物を全然作つていなかつたのですか」の問に対して、「そのとおりです」と明言している旨の記載があるから、彼此対照すると、同証人の右証言部分の信用性は低いといわざるをえない。
(九) そのほか、原告本人の前記供述を裏付けるに足りる証拠資料は存在しない。
右のとおりであつて、原告が、昭和三九年八月以降、本件土地を現実に耕作した事実については、原告本人の供述以外にこれを支持すべき的確な証拠がないことになり、そうだとすると、結局、右事実は認めることができないものというべきである。
そして、上記検討したところを総括すると、次のとおりである。すなわち、
原告において、本件土地に関する農業経営の意図を、第一屋製パン株式会社に譲渡する昭和四〇年八月当時まで持続していたとしても、本件土地は、昭和三八年四月以降、東京都の支配管理のもとに、ごみ埋立用地として使用されており(前記1)、現実かつ継続的に農業用地として使用された事実は認められない(同4)、しかも、東京都の行なつた埋立及び覆土作業によつて、本件土地は、農耕には適しない状態に変化し、その状態において昭和四〇年四月二日原告に返還された(同3)のであるから、右譲渡当時、原告の右意図が近い将来実現されることが客観的に明白であつたとは、到底いうことができないものであつた。
そうだとすると、本件土地は、右譲渡当時、原告の農業用に供されていたとはいえないから、その譲渡について法三八条の六を適用しなかつた本件更正処分は正当であつて、この点に違法はない。
二 信義則違反
成立に争いのない甲第二〇、二一号証の各一、二及び原告本人の供述(第二回)によると、春日部税務署職員は、昭和四一年一二月一六日と昭和四二年二月二一日の二回にわたり、三郷町において、昭和四一年分所得税の申告についての指導を行なつたが、原告に対しては、本件土地の譲渡所得について、法三八条の六を適用したうえの計算を示していること、しかし、その際、原告は、本件土地を譲渡するまで農地として使用していた旨を説明したものであることが認められ、この認定を動かすに足りる証拠はない。
そうすると、右職員が本件土地の譲渡所得について法三八条の六を適用して計算したのは、原告の右説明を前提としてしたことが明らかであるから、その後の調査によつて、右説明にかかる使用状況が誤りであることを発見し、同条を適用しない本件更正処分をしたことは、何ら信義則に反するものではない。
したがつて、この点に原告主張の違法があるとはいえない。
三 譲渡所得の帰属年次
原告が、昭和四〇年八月二八日、第一屋製パン株式会社に対して、本件土地を代金三三二七万五〇〇〇円で売渡し、同日手付金として六六五万五〇〇〇円を受領し、昭和四一年六月一〇日所有権移転登記を経由するとともに、残額二六六二万円の支払を受けたことは、当事者間に争いがない。
そして、前掲乙第四号証、成立に争いのない乙第二五号証、第三六号証によると、本件土地の地目が田であつた関係上、右売買契約においては、売買に関し農地法五条の許可のあることを停止条件としていたところ、昭和四一年六月四日農林大臣の転用許可があつたので、同日本件土地の所有権が移転し、前記登記手続が経由されたことが認められる。
およそ、資産の譲渡に基づく収入金額は、当該資産の所有権が相手方に移転した日の属する年分の総収入金額に算入すべきものである。したがつて、本件土地の譲渡所得が昭和四一年分に帰属することは明らかであるから、この点において、本件更正処分に原告主張の違法はない。
四 最後に、原告の昭和四一年分の所得税額について検討する。
1 本件土地の譲渡による総収入金額は、三三二七万五〇〇〇円であり、これに対する必要経費は、一五三万一一五五円(取得費用一三万三一〇〇円、取得後の改良費三三万九八〇五円、譲渡手数料一〇五万八二五〇円。なお、必要経費の金額については、弁論の全趣旨によつて認める。)、譲渡所得の特別控除額は一五万円であるから、これらを控除すると、本件土地の譲渡所得は三一五九万三八四五円となり、課税標準として総所得金額に算入されるものは、その二分の一の一五七九万六九二二円である。
2 原告の同年分のその余の所得金額(農業所得六万六六一五円、雑所得四〇万円)については、原告は明らかにこれを争わないから、原告の同年分の総所得金額は、一六二六万三五三七円となる。これによつて計算すると、税額は七二二万九一〇〇円、過少申告加算税は三六万八〇〇円となつて、本件再更正処分の各金額と一致する。
したがつて、本件再更正処分によつて減額されたところの本件更正処分には、何らの違法がないことになる。
第三むすび
以上のとおりで、本件訴えのうち、第一において判断した請求に関するものは、訴の利益を欠くから、不適法としてこれを却下し、本件更正処分の取消を求める請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 橋本攻 裁判官 薦田茂正 裁判官並木正男は、転補につき署名押印することができない。裁判長裁判官 橋本攻)
処分経過表
<省略>
物件目録(一)
(譲渡資産)
1 埼玉県北葛飾郡三郷町大字高須字提外五八四番 田 八六二・八〇平方メートル
2 同所 田 九〇九・〇九平方メートル
3 同所 田 七五三・七一平方メートル
4 同所 田 二三・一四平方メートル
5 同所 田 九〇五・七八平方メートル
6 同所 田 九四五・四五平方メートル
物件目録(二)
(買換資産)
1 埼玉県北葛飾郡三郷町大字市助字会野谷五八三番 田 五二五平方メートル
2 同所 五八五番一 田 四六二平方メートル
3 同所 五八七番 田 三七六平方メートル
4 同所 五八九番一 田 八五九平方メートル
5 同県同郡同町大字一本木字四間道 二二四番 田 八九五平方メートル
6 同所 二三二番 田 二一八平方メートル
7 同県同郡同町大字小向字御鷹野道下 八一九番 田 八一九・五二平方メートル
8 同県同郡同町大字東町 一五四番一 畑 二三七平方メートル
9 同所 一五四番三 畑 三六三平方メートル
10 同県同郡同町大字徳島字落堀西大道北一九四番八 池沼 一〇九平方メートル
11 同県同郡同町大字久兵衛字御鷹野道下一〇〇六番一 田 三五四平方メートル
12 同所 一〇〇六番二 畑 一〇二平方メートル
13 同県同郡同町大字徳島字落堀西大道北一九四番地八
家屋番号一九四番八
木造スレート葺二階建店舗兼居宅
床面積 一階 八〇・三九平方メートル
二階 八三・六九平方メートル
取得時期 登記 売主
1~4} 四一、二、二八 四一、三、四 石井光弘
5 四一、六、七 四一、七、二三} 吉田孝一
6 四一、七、二三 四一、八、二九
7 四一、八、二二 四一、八、二九 鈴木平次郎
8} 四一、一二、末日前 四二、三、九 中村芳太郎
9
10 四一、八、二 四一、八、三 中川勘弐
11} 四一、六、二〇 四一、六、二一 飯箸勉
12
13 四一、六、一〇(新築) 四二、四、一九